ポンコツなぼくと、「おうみ君」
私が小学校3年生の時、近所に「おうみ君」という男の子がいました。
「おうみ君」は近所のお母さん達から評判が悪くて、私も母から「おうみ君」とは遊ばないように、と言われていました。どうして評判が悪かったのか、勉強をしないで遊んでばかりいる・・・とか近所の低学年の子達とばかり遊んでいて変な子だ・・・とか。自分より年下の子の体をよく触る変な子・・・そんな評判だったと思います。
「おうみ君」と遊ぶ時は少し後ろめたい気持ちがありつつ遊んでいました。
よく家まで来て遊びに誘ってくれるので、迷惑な気持ちがあったと思います。”本心では遊びたい”けれど、”親や大人に悪く思われたくない”の気持ちでした。
そんな「おうみ君」に誘われて近所の公園に遊びに行った時の出来事。
前日まで雨がそこそこに降っていたので、公園の中の川は増水していました。川幅は2メートルくらい。深さは1メートルくらいでした。
「おうみ君」と、その川をジャンプして飛び越えるという遊びが始まりました。
コンクリが積み重なった高い所からジャンプして、川を飛び越える遊び。
「おうみ君」は小学6年生なので、軽々ジャンプします。
私もドキドキしながら、でもちょっとスリリングな状況にわくわくしながら、、、、ジャンプ!
無事飛び越えたけど、遊ぶ用に持ってきたボールが着地の衝撃で手から離れて、川に落ちてしまった。
「お母さんに買ってもらった大事なボール・・・・・」と思って、ボールを取りに川の中へ入っていくぼく。
もうボールしか目に入っていなかった。服が濡れるとか危ないとか考えていなかった。
公園の川は、高さが1メートルくらいの段々になっていて、少し平坦な流れの後は1メートルくらいの崖がある。
ボールは川の流れでどんどん流れていく。ボールしか目に入っていないから焦って追いかけていく。どんどん崖は迫っていました。
川の流れは速く、小学3年生のぼくの胸元まで水はあって、「どうしよう、どうしよう」と泣きながらボールを追いかけていた時、
体を力強く誰かに抱きかかえられました。
自分より大きな、でも大人に比べたら小さい、小学6年生の男の子の体。
崖の本当に少し手前で、僕は「おうみ君」に助けられました。
その後・・・・「おうみ君」は危ない遊びに小さい子どもを誘った悪い子として、ずいぶん怒られたようです。
後で聞くと、「おうみ君」は学校が嫌で不登校だったそう。不登校がよくないって思われていたから、近所の人たちの評判も悪くて、きっと親御さんも(今思えば)辛かったんだろうと思う。
同級生とうまくいかないから、年下の子と遊びたかっただけなんだろうと思う。勉強も好きじゃないからやらなかっただけだと思う。体を触るなんて、ぼくはされたことがないから、悪い噂に尾ひれ背ひれがくっついただけかもしれない。
少なくても、あの時の「おうみ君」は僕の命を救ってくれたヒーローだった。
速い流れの川の中に飛び込んで、溺れかかっていた僕を救ってくれた。
周りの大人の評判や噂なんかより、僕をしっかりと抱きかかえてくれた感触の方が、僕にとってのリアルだった。
「おうみ君」ありがとう。
今は、どこで、何をしているのかな?
もう会えないかもしれないけど、感謝します。
ありがとう。